平成28年5月20日
平成27年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会奨励賞 講評
学術研究部門 6編
A-4 全面有孔天井を用いた対流・放射空調を行うオフィスビルにおける室内環境に関する研究(その1)空調システム概要及び執務空間の換気性能
〇多良俊宏(大阪大学)山中俊夫(大阪大学)甲谷寿史(大阪大学)相良和伸(大阪大学)桃井良尚(大阪大学)内田一也(三機工業)水出喜太郎(日建設計)後藤悠(日建設計)
[審査評] 近年話題の対流・放射空調について、実オフィスにおいて、発熱とCO2を人為的に発生させ、換気性能と温熱環境の評価を行った研究である。限られた条件下での実測であり今後更なる実験による確認が必要であるものの、いくつかの有用な知見が得られており、また活発な質疑に対して丁寧な回答を行うなどプレゼンテーション全般についても良好であり奨励賞に値する論文と判定した。
A-42 事務所ビルを対象とするフロア稼働状況変動とエネルギー需要への影響
〇黄雄明(大阪大学)山口容平(大阪大学)岡本大河(大阪大学)宮地優介(大阪大学)金範埈(大阪大学)木村舜(大阪大学)下田吉之(大阪大学)
[審査評] エネルギー消費量から最適オフィス計画に定量的な評価を試みた研究で、執務者の利用状況を近畿圏パーソントリップ調査データを用いて推定した点も工夫のひとつであった。プレゼンのレベルはセッション内諸君と拮抗していたが、着眼点のユニークさから、奨励賞に値する論文と判定した。
A-64 兵庫県における気候変動によるコメ収量変化の予測
〇栁澤和紀(大阪大学)小西遼(大阪大学)嶋寺光(大阪大学)近藤明(大阪大学)
[審査評] 本論文は、コメ収量と作況指数の将来予測を行うことを目的としている。過去の気象と作物収量の統計値をもとに導出した回帰式に対して将来気候データを与えて推定を行い、極端現象の増加により年ごとの変動が大きくなるとの結果を得ている。新規性、アピール力が高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。
A-72 トラクタの車室環境改善に向けた実大実験及び人体モデルによる検証
〇織田浩平(立命館大学)近本智行(立命館大学)李明香(立命館大学)
[審査評] 本論文は、夏期日射環境下でのトラクタ車内の温熱環境の実測データを元に、車室の数値計算モデルの検証をおこない、車室の温湿度、気流、放射環境の予測を可能にした。また車室モデルと人体熱モデルの連成解析により人体生理反応の予測をおこなっている。数値解析の結果、屋根の断熱を強化し、トラクタ座面を直接冷却することで運転手への熱負荷を低減できると結論づけている。新規性、工学的応用性が高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。
A-74 冬期における農業用ビニルハウスの効率的な暖房方式に関する研究(第2報)高床式砂ベッドの加温と保温による葉采類生育促進効果の実証と寒冷地への適用可能性の検討
〇笠島佳明(大阪市立大学)鍋島美奈子(大阪市立大学)西岡真稔(大阪市立大学)大橋良之(東レ建設)岡本治(茂広組)前田一隆(グリーンファーム)
[審査評] 本論文は、ビニルハウスに設置された高床式栽培用砂ベッドの砂層直接加温方式による葉菜類の生育促進の実証実験をおこない、収穫時重量や土壌積算温度、消費電力量によりその暖房効果を検証している。また、ビニルハウス全体の簡易モデルを用いて熱流体解析をおこない、葉菜類生育促進の観点から暖房方式の違いや気象条件の違いによる暖房効果の差異を明らかにしている。工学的応用性、アピール力が高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。
A-84 河川水利用地域熱供給システムの性能検証・評価に関する研究(第16報)河川水利用によるヒートアイランド負荷の低減評価と11年間のプラント性能評価
〇金子亮平(関西電力)林英人(関西電力)三島憲明(関電エネルギーソリューション)丹羽英治(日建設計総合研究所)髙橋直樹(日建設計総合研究所)小池万里(日建設計総合研究所)下田吉之(大阪大学)
[審査評] 本研究は既存の地域冷暖房システムの熱需要、エネルギー消費量を11年にわたって計測し、システム性能を継続して改善してきた成果を報告している。加えて、地域冷暖房システム、需要家建物、大気、熱源として利用している河川の熱収支を明らかにし、ヒートアイランド負荷の削減にも寄与してきたと結論付けている。工学的応用性が高く、奨励賞に値する論文と判定した。