平成22年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会 近畿支部研究発表優秀論文

平成22年度空気調和・ 衛生工学会近畿支部学術研究発表会 
近畿支部学術研究発表会奨励賞の選考結果について

(社)空気調和・衛生工学会近畿支部
支部長 中尾 正喜
学術研究発表委員会主査 梅宮 典子

 空気調和・衛生工学会近畿支部では、平成23 年3月17日に開催されました平成22年度近畿支部学術研究発表会に際し、「近畿支部学術研究発表会奨励賞」を選定することとし、慎重に審査した結果、下 記の6編の論文を選考いたしました。


A-8 偏光顕微鏡画像を用いた浮遊石綿の光学的特徴に関する研究【PDF 1,577KB】 

佐藤星河(大阪大学)、井上義雄(大阪大学)、近藤明(大阪大学)

[審査評]本論文は、健康被害を引き起こしている石綿のモニタリングに着目し、偏光顕微鏡を用いて石綿の光学的特徴を抽出する消光角測定システムを開発し、石綿(アンモサイト)標準試料について、人間の目視との比較を行い、開発したシステムが目視に近い精度で見分けることが可能であり、モニタリングに有効としている。新規性および工学的応用性が高く評価できることから奨励賞に値する論文と判定した。

  
A-21 建物群幾何学形状の持つ日射受熱特性のモデル化に関する研究【PDF 6.925KB】 

石黒亮(立命館大学)、近本智行(立命館大学)、前田崇瑛(立命館大学)

[審査評]本論文は、伝熱特性保存型街区形状モデル(Thermalモデル)のパラメータを改良し、地面天空率の簡易推定方法では詳細形状モデルとの予測誤差が10%以内で、形状を単純化した均等配置Gridモデルとの放射伝熱の予測比較では、Thermalモデルの方が天空率および日射受熱量ともに予測精度が良いこと示している。独自性、学術貢献度およびプレゼンテーションが高く評価できることから奨励賞に値する論文と判定した。

  
A-60 中小規模建物における換気状態の簡易評価に関する研究
-均等配置モデルとの比較-【PDF 6.925KB】
 

堀田裕子(大阪市立大学)、西岡真稔(大阪市立大学)、中尾正喜(大阪市立大学)、鍋島美奈子(大阪市立大学)

[審査評]IAQ測定機器を使用していない中小規模建物を対象として、詳細な換気量や空気齢、換気状態などを示し、室内の換気状態に影響を及ぼす因子の検討を行った。換気状態判断チェックシートを作成し、室内の空気質を簡易に評価できる指標を作成した。CFD解析から、定量的な換気に対して季節の要素を加えることで、今後の研究でより厳密な換気状態を把握することが期待される。

  
A-71 井水熱源氷蓄熱システムにおける性能検証・評価に関する研究
(第2報)井水最適利用に向けた取り組み改善策とその結果【PDF 1,412KB】

岸本卓也(関西電力)、木虎久隆(関西電力)、中田茂郎(日建設計)、下田吉之(大阪大学)、 永恵慎也(大阪大学)

[審査評]古い井水の有効利用の研究である、すでに建物概要と初期の運転性能評価結果が報告されているが、本研究は各種井水利用モードの試行と、シミュレーションモデルを用いた井水の最適利用方法を検討したものである。冷、暖房期において、各4種運転モードを試行し、ポンプの定格流量で井水を流し続ける「省エネモード」が熱源システムの効率を最も高くし、シミュレーションモデルの検討では、外調機井水コイル活用で、熱源システム全体の約3?6%の消費電力が削減できたことを示した。今後さらなる井水の有効利用法の研究が期待される。

  
A-76潜熱蓄熱材と除湿材を併用したデシカントシステムの熱・湿気特性に関する研究
(その1)数値計算による吸放湿性能予測【PDF 1,053KB】

山口麻有(大阪大学)、桃井良尚(大阪大学)、相良和伸(大阪大学)、山中俊夫(大阪大学)、甲谷寿史(大阪大学)

[審査評]デシカントシステムにおいて潜熱蓄熱材(PCM)と除湿材を併用し、相変化させることで、除湿時に発生する吸着熱を潜熱として吸収させる方法を考え、除湿された空気の顕熱変化を最小にし、等温除湿することができた。除湿量増加も期待できることを示し、シュミレーションと湿気特性の測定を行った。顕熱、潜熱交換の効率を高めることが示された。このシステムは開発の有効な手段として期待される。

  
B-2 配管摩擦抵抗低減剤と推定末端差圧保証制御
-某大規模ビルへの剤導入結果とポンプ制御の検討-【PDF 622KB】

門脇宏和(新日本空調)、岸本章(大阪ガス)、青木浩一郎(大阪ガス)、横川義明(アーバネックス)、三宅康夫(アーバネックス)、山本彦衛(大阪ガストータルファシリティーズ)、井口泰男(新日本空調)、西浩之(新日本空調)、岡崎徳臣(新日本空調)

[審査評]本報告は、ポンプ動力の省エネ化を図るために、大規模なオフィスビルにおいて、配管摩擦抵抗低減剤および推定末端差圧保証制御を導入し、配管抵抗および電力量から30%以上の省エネ効果を確認すると共に、低減剤と推定末端差圧保証制御の合わせ技で60%以上の効果が期待できるとしている。工学的応用性およびアピール力が高く評価できることから奨励賞に値する技術報告と判定した。

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