平成24年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会 近畿支部研究発表優秀論文

 平成25年5月20日

平成24年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会奨励賞 講評

公益社団法人 空気調和・衛生工学会近畿支部
支部長 鉾井 修一
学術研究発表委員会主査 梶井 宏修

 

 空気調和・衛生工学会近畿支部では、平成25 年3月13日に開催されました平成24年度近畿支部学術研究発表会に際し、「近畿支部学術研究発表会奨励賞」を選定することとし、慎重に審査した結果、下 記の7編の論文を選考いたしました。

 

                            記

               

学術研究部門 6編

A-2

ビジネスホテルにおける給湯システムからの熱損失と保温改修

増田喜憲(京都大学)鉾井修一(京都大学)森本研二(関西電力)五井努(関西電力)

[審査評]本論文は、建物のエネルギー消費の中で大きな割合を占める給湯用エネルギーについて省エネルギー化を推進することを目的とし、ホテルを対象として給湯システムにおける熱損失を実測し、保温改修による省エネ効果を分析した。実使用時の給湯配管における熱損失の測定結果の報告は少なく、本研究の成果は貴重である。また保温改修の効果分析にいたる検討過程も詳述されており、その考察は信頼できる。以上の新規性と工学応用性が高く評価されることから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-13

コーナーボイドを有する高層オフィスビルの自然換気性能に関する研究

(その1)自然換気計画の概要及び自然換気口における流入出量に関する検討

大森啓充(大阪大学)山中俊夫(大阪大学)相良和伸(大阪大学)甲谷寿史 (大阪大学) 桃井良尚(大阪大学)田中俊祐(大阪大学)高山眞(日建設計)田辺慎吾(日建設計) 田中規敏(竹中工務店)和田一樹(竹中工務店)岡本尚(竹中工務店)

[審査評]本論文は、自然換気口が設けられた大規模オフィスビルについて、風速・トレーサガス濃度・温度測定を行い、自然換気時の外気の流入・流出性状を報告した。外部風速と主風向で3分類して整理された測定結果は、自然換気の実態を明確に捉えており工学的応用性の観点から価値がある。また、一連の測定結果が過不足なく記載されており、緻密な分析過程に対して学術的貢献度が高く評価された。以上より、奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-19

シーリングファンを用いたオフィス空間内の熱環境調整に関する研究

(その4)サーマルマネキンによる人体各部位対流熱伝達率の測定および65MNへの適用

山口麻有(大阪大学)桃井良尚(大阪大学) 相良和伸(大阪大学)山中俊夫(大阪大学)甲谷寿史(大阪大学)森井祐介(大阪大学)古賀修(関西電力)一谷匡陛(関西電力)高山眞(日建設計)笠原万起子(日建設計)宮本征一(摂南大学)

[審査評]本論文は、省エネルギー性を確保した気流による温熱環境改善を目的として、シーリングファン(以下CFとする)とエアコンを併用したオフィス向け空調手法を提案する一連の研究の一角を担った報告である。サーマルマネキンを用いてCF気流曝露下で測定した人体各部位対流熱伝達率を「65分割体温調節モデル 65MN」に適用し、皮膚温、65 MN SET*を算出し、被験者実験による皮膚温測定結果と比較している。予測結果は測定結果と概ね一致し、検討した条件においては、2 node SET*とよく一致することを確認しているが、両者の乖離についても丁寧な説明が与えられており、その学術貢献度および明解なフレゼンテーションが評価できることから奨励賞に値する発表と判定した。

 

A-41

夏期の寝室温熱環境が高齢者と若齢者の終夜睡眠に与える影響

亀ヶ谷佳純(奈良女子大学)久保博子(奈良女子大学)磯田憲生(奈良女子大学)東実千代(畿央大学)佐々尚美(武庫川女子大学)

[審査評]本論文は、高齢者と若齢者を対象に、夏期の自宅寝室における温熱環境と睡眠の実態調査と、実験室における人体特性の計測を行っている。エアコン使用群と非使用群に分けて検討を行い、高齢者と若齢者の違いやエアコン使用の有無の違いが睡眠時の生理心理反応に及ぼす影響について考察している。以上のように、学術への貢献が高く、プレゼンテーションの評価も高いことから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-61

帯水層を利用した昼夜間蓄熱システムの研究  -長期間運転時の蓄熱特性の把握と検証-

佐々木健太(大阪市立大学)藤井良平(大阪市立大学)中島成章(大阪市立大学)中曽康壽(関西電力)中尾正喜(大阪市立大学)西岡真稔(大阪市立大学)鍋島美奈子(大阪市立大学)

[審査評]本論文は、開放帯水層を利用した蓄熱システムについて、実井戸を使用しての長期間運転の揚水温度から蓄熱特性を把握すると共に蓄熱モデルの構築を試みている。昼夜間の蓄熱利用を想定した注水揚水実験から開放帯水層においても80%を超える熱回収率があり、帯水層の深度により蓄熱特性が大きく異なることも示している。また、地下水流動解析ツールを使用した蓄熱モデルを構築し、揚水温度応答をある程度再現できたとしている。井戸の揚水温度の実測や温度応答が説明できる蓄熱モデルの構築など独自性および工学応用性が高く評価できることから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-68

住宅外被のリノベーションによる省エネルギー性能の改善に関する研究

山本大輔(京都府立大学)尾崎明仁(京都府立大学)李明香(京都府立大学)井上玄規(京都府立大学)

[審査評]本論文は、無断熱住宅の屋根、外壁、窓など外被の熱性能を改善した場合の省エネルギー効果について、数値シミュレーションを用いて各部位の空調負荷の低減効果を検討したものである。数値シミュレーションからは外壁、屋根、窓の断熱が重要であるが、単独改修では効果が少なく、窓と外壁を複合改修すると省エネ基準を満たすとしている。断熱性能が低い中古住宅の熱的性能の改善に関する数値シミュレーションによる評価に関して新規性および工学的応用性が高く評価できることから奨励賞に値する論文と判断した。

 

技術報告部門  1編

C-1

K大学における設備計画について

増田恭大(竹中工務店)粕谷敦(竹中工務店)中川浩明(竹中工務店)

[審査評]本報告は、大学キャンパスにおける体育館、食堂などの移転建替計画における太陽熱利用および厨房換気設備に関する報告である。太陽熱利用は真空管式パネルにより集熱した熱エネルギーをデシカント空調機の再生熱、給湯、暖房に利用し、年間を通じて有効利用している。電流値、ガス流量を用いたフード毎の換気風量制御、未処理外気の活用、空調空気の天井低風速吹出による厨房内気流の改善など先進的な厨房換気設備を導入している。これらは新規性及び工学応用性が高く評価できることから奨励賞に値する技術報告と判定した。


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